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前回の記事では、写真をどこに置くのかについて書いた。
InstagramやXのような大きなプラットフォームだけではなく、Fediverseという選択肢もある。
では、そもそもFediverseとは何なのか。
名前を聞いたことがあっても、Mastodonのことだと思っている人もいるかもしれない。
あるいは、InstagramやXの代わりになる新しいSNSだと思っている人もいるかもしれない。
でも、少し違う。
Fediverseは、一つのSNSの名前ではない。

Fediverseとは何か
Fediverseという言葉は、FederationとUniverseを組み合わせたものだと言われている。
簡単に言えば、それぞれ独立したサービスやサーバーが、共通の仕組みを使ってつながっているネットワークだ。
ここだけ聞くと、少し難しく感じるかもしれない。
写真で考えてみると分かりやすい。
例えば、もし世界に写真を展示できる場所が、一つしかなかったらどうだろう。
世界中の写真家が、その一つのギャラリーに作品を持ち込む。
どんな写真を展示するのか。
どの写真が目立つのか。
どの写真家が多くの人に見てもらえるのか。
そのすべてを、その一つの場所が決めることになる。
もし、そのギャラリーの方針が変われば、写真家たちはそれに合わせなければならない。
でも、実際の世界には、一つのギャラリーしか存在しているわけではない。
それぞれの場所に違うギャラリーがあり、写真集を扱う本屋があり、ZINEを置く場所がある。
写真家は、自分の作品に合った場所を選ぶことができる。
そして、それぞれの場所にいる写真家や観客が行き来することで、もっと大きな写真文化が生まれていく。
Fediverseも、少しこれに似ている。
一つの巨大なサービスだけが、インターネット上のすべての人を集めているのではない。
それぞれが独立した場所を持ちながら、互いにつながることができる。
そのために使われている共通の仕組みの一つが、ActivityPubというオープンなプロトコルだ。
ActivityPubは、サーバー同士が情報をやり取りするための仕組みを定めている。
そして、こうした共通の仕組みによって、独立したサービスやサーバーが相互につながるネットワークをFediverseと呼ぶ。

違う場所にいる人とも、会話ができる
Fediverseを理解するうえで、自分が一番分かりやすいと思うのが、メールだ。
例えば、Gmailを使っている人がいる。
相手がYahoo!メールを使っていたとしても、普通にメールを送ることができる。
Gmailを使っているからといって、Gmailを使っている人としか会話できるわけではない。
Outlookを使っている人ともやり取りできる。
それぞれが違うサービスを使っていても、メールという共通の仕組みがあるからだ。
Fediverseも、この感覚に少し近い。
それぞれが違うサービスや場所にいても、共通の仕組みによってつながることができる。
もちろん、メールとFediverseがまったく同じ仕組みというわけではない。
でも、
「同じサービスを使っているから会話できる」のではなく、「共通の仕組みでつながっているから会話できる」
という考え方は、Fediverseを理解するうえで大切なポイントだと思う。
Centralized (既存SNS)
Fediverse
いろいろな場所が、ひとつのネットワークにつながっている
では、実際にはどんな場所がつながっているのか。
Fediverseには、さまざまなサービスがある。
例えばMastodon。
短文の投稿を中心としたSNSとして知られている。
Pixelfedは写真を中心としたプラットフォーム。
Misskeyには独自の文化や機能を持ったさまざまなサーバーがある。
動画ならPeerTube。
コミュニティ型のサービスならLemmy。
そして、Webサイトもその中に参加できる。
WordPressにActivityPubを導入すれば、WordPressで作ったWebサイトもFediverseとつながることができる。つまり、Fediverseに参加する方法は一つではない。
WordPressを使わなければいけないわけでもない。
写真を中心にするならPixelfed。ブログや出版を中心にするなら、FediverseとつながるWebサイト。MastodonのようなSNSを使うこともできる。
それぞれは違う目的や文化を持った場所だけれど、共通の仕組みによって互いにつながることができる。

写真を「投稿する場所」から考えてみる
ここで、もう一度写真について考えてみたい。
例えば、自分が撮った写真をInstagramに投稿する。そこにはたくさんの人がいて、写真を見てもらうための仕組みも整っている。それ自体は、とても便利なことだ。
一方で、Fediverseでは、写真を置いている場所と、写真を見る人がいる場所が、必ずしも同じである必要がない。
Mastodonを使っている人が、Pixelfedにいる写真家をフォローする。あるいは、写真家自身のWebサイトをフォローする。
Webサイトに新しい記事や写真が公開されれば、それを普段使っているFediverseのクライアントから見つけることもできる。
自分の写真を置いている場所と、それを見る人がいる場所を、同じサービスに限定しなくていい。
写真家にとって、これは意外と大きな変化だと思う。

つながりを残したまま、別の場所へ移る
Fediverseのもう一つの面白さは、活動する場所を変えられることだ。
例えば、今いるサーバーやサービスが自分に合わなくなったとする。
写真家で言えば、これまで展示していたギャラリーから、別のギャラリーへ活動の拠点を移すようなものだ。
もちろん、写真を壁から剥がして、そのまますべて持っていけるように簡単な話ではない。
Fediverseでも、投稿やすべてのデータが完全にそのまま移行できるわけではない。
ただ、Fediverseにつながるサービスの中には、これまでのつながりを維持しながら活動の拠点を移すための仕組みを持つものもある。
例えばMastodonでは、別のサーバーへアカウントを移行すると、対応しているソフトウェアを使っている場合、現在のフォロワーを新しいアカウントへ自動的に移すことができる。
一方で、投稿やメディアまで完全にそのまま移行できるわけではない。フォローしている相手やブロック、ミュートなども別途エクスポート・インポートする必要がある。
つまり、
「一度ここにアカウントを作ったら、ここから出られない」という考え方ではない。
すべてが綺麗に移行できるわけではないけれど、これまで築いてきたつながりをある程度維持しながら、自分に合った場所へ活動の拠点を移すことができる。
例えば、もしXとInstagramがActivityPubでつながっていたらどうだろう。
Xで長い時間をかけて築いてきたフォロワーとのつながりを維持したまま、Instagramへ活動の拠点を移すことができる。
「Xを離れたら、これまで築いてきたものをすべて失う」ということではない。
もちろん、実際にはサービスごとに移行できる範囲や仕組みは異なる。
それでも、一つのサービスに自分の活動を完全に縛り付けるのではなく、つながりを持ったまま、自分の拠点を選び直せる。
これも、オープンなネットワークだからこそ生まれる特徴の一つだと思う。

まだ、Fediverseがすべてではない
ここまで読むと、Fediverseが今のSNSに取って代わるもののように感じるかもしれない。
でも、現時点ではそうではない。
Instagram、YouTube、Xなど、既存の大きなプラットフォームには圧倒的に多くのユーザーがいる。
写真を多くの人に見てもらうという意味では、今でも非常に強い場所だ。
Fediverseに移れば、すべてが解決するわけでもない。
むしろ、「既存のSNSをFediverseに置き換える」という考え方自体が、少し違うのかもしれない。
Fediverseは、別の方向へ進んでいる。
その進化のスピードは、大手SNSと比べると遅く見えることがある。
一つの企業が「明日からこの機能を追加します」と決めて、世界中のユーザーに一斉に提供する仕組みではないからだ。
複数の企業、開発者、サーバー管理者、コミュニティが、それぞれの場所で少しずつ作っている。だから、時には遠回りにも見える。
でも、その遅さは、誰か一社がネットワーク全体の未来を決めているわけではないことの裏返しでもある。
一つの会社がすべてを決める速さではなく、いろいろな場所がそれぞれ進化しながら、全体として少しずつ変わっていく。
自分は、そこに面白さを感じている。

これからどうなるのか
実際、Fediverseを取り巻く動きは少しずつ広がっている。
新しいサービスが生まれたり、既存のサービスがActivityPubへの対応を進めたりしている。
そして、少し興味深い動きもある。
ジャーナリストやメディア関係者をFediverseへ迎え入れようとする動きも出ている。
例えばMastodonは、記事の著者とFediverse上のアカウントを結びつけ、記事を共有した際にその著者を見つけてフォローできる機能を導入した。The Verge、MacStories、MacRumorsなどが初期の導入例として挙げられている。
さらに2026年のMastodonの技術方針でも、ジャーナリストや公的機関などが既存の大手プラットフォームに代わる場所を探していることを踏まえ、そうした人たち向けの機能を強化していく方針が示されている。
これは写真家にも少し似ていると思う。
写真家が自分の作品をSNSだけに預けるのではなく、自分のWebサイトや写真集、ZINEなど、自分で管理できる場所を持とうとするように、ジャーナリストにとっても「自分の発信をどこに置くのか」という問題は重要になっている。
EUでも、こうした動きはすでに始まっている。
欧州データ保護監督機関(EDPS)は2022年、Mastodonを基盤とした「EU Voice」と、PeerTubeを基盤とした「EU Video」という分散型SNSのパイロットを開始した。EUの機関や組織がアカウントを作り、Fediverseにいるユーザーとつながることができる取り組みだった。パイロットは2024年まで運用され、EDPSはその結果を成功した取り組みとして報告している。
こうした動きが、これからどこまで広がっていくのか。Fediverseがこれからどこまで成長するのか。既存のSNSとどう共存していくのか。
そして、写真やジャーナリズムを含め、インターネット上で作品や情報を発信する人たちの環境がどう変わっていくのか。
このあたりは、これからも追いかけていきたいテーマだ。ただ、今ここでその話を全部する必要はないと思っている。また別のタイミングで、Fediverseそのものの未来について書く時が来たら、その時に改めて考えてみたい。

だから、Webサイトもつながれる
ここで、Dystronixの話に戻りたい。
自分は写真を残していく場所として、自分自身のWebサイトを作りたかった。
自分のドメインを持って、自分でデザインして、自分で写真を選んで、自分で文章を書く。
そこには、自分が撮った写真だけではなく、写真について考えたことや、インターネットについて考えたことも残していきたい。
そのために、自分はWordPressを使っている。
そして、ActivityPubのプラグインを使うことで、このWebサイト自体をFediverseにつなげている。
自分が使っているこの仕組みに近いものとして、Ghostというサービスもある。
Ghostは2025年にActivityPubのソーシャルWeb機能をパブリックベータとして公開し、Ghostの出版物をFediverseにつなげる取り組みを進めている。
つまり、WordPressでなければいけないわけではない。
大切なのは、どのサービスを選ぶかではなく、自分の場所を持ちながら、その場所を閉じたものにしないこと。
自分にとって、そこが重要だった。

なぜDystronixはFediverseにつながっているのか
だから、DystronixがFediverseにつながっている理由は、
「WordPressを使っているから」ではない。
「Mastodonが好きだから」でもない。
Fediverseが今のSNSより大きいから選んだわけでもない。
すべてを置き換えられると思っているわけでもない。
自分が大切だと思ったのは、
自分の場所を持つこと。
そして、
その場所から世界とつながれること。
その二つを同時に実現できる仕組みとして、Fediverseに魅力を感じた。
写真を撮る場所を自分で選ぶ。
写真を展示する場所も自分で選ぶ。
そして、その場所とどこにつながるのかも自分で選ぶ。
これから先、Fediverseには新しいサービスが生まれるかもしれない。
今とは違う方法で写真を共有する場所が出てくるかもしれない。
だからこそ、特定のサービスに依存することよりも、サービスをまたいでつながれる仕組みそのものに意味があると思っている。
Dystronixは、その中の一つの小さな場所にすぎない。
でも、自分の場所であると同時に、外の世界ともつながっている。
自分の場所を持ったまま、閉じない。
それが、このサイトがFediverseにつながっている理由だ。
本記事に掲載している写真は、すべて omi kim が撮影したものです。
著者について

omi kim
大阪を拠点に活動するストリートフォトグラファー。
写真・Fediverse・個人Webについて発信しています。
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